ゼミ

 毎週水曜日の午後はゼミの日にあてています。
 午後1時から今週1週間それぞれ何をしたかを確認し、来週1週間何をするかを表明する、プログレセミナーをして、午後2時から論文紹介をする、という流れでしばらくやっていくことにしました。
 4年生の2人はもちろん論文紹介をしたこともなければ、聞いたことすらありません。最初となる今日は私が引き受けることにしました。最初の印象が大事なので、手を抜かずに準備することにしました。昨日の夕方から準備をしたのでしんどかったです・・・(昨日から準備する時点で手を抜いている気もしますが・・・)。理学部からI崎さんも来てくれて引き締まった感じになったかと思います。次回はキャプテンです。ガンバレ。

【紹介した論文】
Wandeler P., Paquita E.A.B, and Lukas F.K., 2007. Back to the future: museum specimens in population genetics. TRENDS in Ecology and Evolution 22(12): 634-642.
 分子生物学的手法を用いた自然史標本研究の限界と可能性をレビューしたもので、この論文では特に進化的変化に着目した研究に焦点を絞ってまとめています。博物館業界の人間にしてみれば有名な論文です。ざっくりと説明するならば、博物館に収められている標本サンプルと野外の状況を比較することにより、注目する遺伝子の遺伝子型頻度の変化や、遺伝的多様性の継時的な変化などを明らかにできますよ、これは保全や進化の面白い研究になりえるよ、という内容です。
 この論文の中ではPCRの際の誤取込(misincorporation)の問題や、マイクロサテライトでの遺伝子型決定の際に生じるミスなど、標本からのDNAを抽出して解析する際の問題についても紹介されていて、あらためて勉強になりました。また、研究をする際にちゃんと標本庫に連絡をとって成果がでたら標本庫に還元しましょう(論文の謝辞にも載せろ、別刷りを送れとか)、ということも書いてあって、元標本管理者としてはとても満足しました。
 読んでみて改めて思うのは、植物の場合、1年草で標本数が多いもの、特に1枚のシートに沢山の個体がマウントされているもの(ホシクサとかかなぁ?)など、植物を選べば面白い研究ができそうです。水草でやるなら農薬耐性遺伝子の時間的変化と分散とかかなぁ(ミズアオイオモダカなど水田雑草が狙い目か)。保全の研究を狙うなら、既に野外の集団が調べつくされているアサザを対象に博物館標本の遺伝子型を決定してみる仕事をしてみてもいいかもしれません。

【補助的に紹介した論文】
Saltonstall, K., 2002. Cryptic invasion by a non-native genotype of the common reed, Phragmites australis, into North America. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99: 2445-2449.
Cozzolino, S. et al., 2007. Genetic variation in time and space: the use of herbarium specimens to reconstruct patterns of genetic variation in the endangered orchid Anacamptis palustris. Conserv. Genet. 8: 629-639.