どこに根づくのかわからないマツモの話:系統的位置はどこ?

マツモ(淀川産)

 N先生と最近Morton(2011)によって発表されたXdh(Xanthine dehidorogenase;キサンチンデヒドロゲナーゼ)に基づく被子植物系統樹の話になりました。真面目に読んでなかったので少し眺めてみると、被子植物の根元にCeratophyllaceae(マツモ科)がきています。Chase et al.(1993)の葉緑体での解析を支持する結果でした。びっくり。 他にもこれまでとの見解とわかれるものもありました。ちなみにMortonのこの論文ではNymphaeaとBraseniaが単系統、Nupharがその外側にきていて、Nymphaeaceaeを広くとることを支持する結果でした。Cabombaを入れたら変わるのかもしれないけれど。
 さて、マツモの結果に戻ると1遺伝子座で書いた系統樹、更に1サンプルだけなので・・・と言い訳が書いてあり、これまでの結果と今回の結果の解釈については、より詳細な調査が必要としていました。
 それにしてもマツモは解析する遺伝子座によってフラフラするグループです。以下にこれまでの研究の結果をまとめてみました。

被子植物の基部(Chase et al., 1993; Savolainen et al., 2000; Morton, 2011[rbcL, atpB/rbcL, Xdh])
●単子葉の姉妹群(Zanis et al., 2002, 2003; Qiu et al., 2005; Soltis et al., 2005)
●Chloranthaceaeセンリョウ科の姉妹群(Qiu et al., 2006)
●真正双子葉類の姉妹群(Soltis et al., 2000; Hilu et al., 2003; Qiu et al., 2005, 2006)
●ショウブ科の姉妹群(Savolainen et al., 2000[atpB];ショウブ科は残りの単子葉と姉妹群)

 APGIIIが発表されて、Ceratophyllaceaeの位置は真正双子葉の外側という解釈で落ち着くのかと思っていましたが、まだまだ確定するのは先のようです(APGIIIでの系統樹)。
 写真は淀川産のマツモ(2007年10月27日に守口市にて撮影)。マツモはしっかりとした根を張らないので、水の中を漂いながら生きていて、浮遊植物に分類されることもあります。系統樹での位置も生き様と同じでフラフラしているということでしょうか。どこかにしっかり根をつけて落ち着いて欲しいものです。

【参考文献】
Morton C. M., 2011. Newly sequenced nuclear gene (Xdh) for inferring angiosperm phylogeny. Ann. Missouri Bot. Gard. 98: 63-89.