淀川のハマアカザ属Atriplex L.

ハマアカザ属の種子

 特別展の解説書のほぼ最終校正をしています。淀川の塩生植物の部分に「ハマアカザA. subcordata Kitag.が生育する」と書いてあるところに差し掛かり、校正が止まってしまいました。淀川大堰より下流の干潟環境にはハマアカザ属が分布していますが、実は以前から心にひっかかるものがありました。ホソバハマアカザA. gmelinii C.A.Meyerではないだろうとは思っていたのですが、本当にハマアカザか自信がなかったからです。じゃあ、過去の文献をみればいいじゃん、と思って調べてみたものの大阪府の植物目録や野生生物目録にはそもそもハマアカザ属が出てきません。がーん。新分布?
 葉の形態からホコガタアカザA. prostrata Boucher ex DC.とは違いますし、花の付き方からミナミハマアカザA. suberecta I.Verd.でもありません。普通にいったらハマアカザしかないんですが、標本庫で真面目に他の産地のものと比べると、種子が他の産地のハマアカザ(3-4mm)に比べて小さいし(2mm-2.5mm)、葉っぱが少し細い気がします。
 葉が細長く、ハマアカザよりも質が薄い葉をもつものを勝山(2000)がセイヨウハマアカザA. patura L.?として報告しているのですが、これなのかなぁ。どちらにしろ、真面目に調べないとわからなそうです。こういった、過去の文献に出てこない種類はたいてい新種か新分布種であるかのどちらかです。今回は淀川の汽水域ですし、まあ確実に新手の外来種の新分布になりそう。特別展まで待ったなしなので、今年の秋以降の宿題にしたいと思います。
 写真は左からホソバハマアカザ、淀川のハマアカザ属、ハマアカザの種子。