ハス

 長居植物園では今ハス(ハス科)は見ごろです。
 写真は開花3日目の花(たぶん)。ハスは開いて、閉じてを繰り返してだいたい4日間咲き続けます。ちなみに「ポン」とか「ポス」とか「パン」といった破裂音が開花の際にする?という質問をよくされますが、しません。

 
 以下、以前メーリングリストomnhに流した「ハスの音」に関する記述。
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 ハスの開花に伴なって、「ポン」とか「パン」と音がするかについては、未だにテレビなどで取り上げられますが、そのような音はしません。
 昭和11年に「大賀ハス」で知られている大賀一郎が花にマイクロフォンをつけた実験を行い、花弁の伸長に伴なう若干の摩擦振動はあるものの、大きな破裂音のような音はしない、という事を明らかにしています。大賀は、このような音を聞いたとする話が、鉢植えのハスや水田のハスではなく、ほぼ全て池のものに基づいていることから、カエルやコイが水面でたてる音ではないか、と考察しています。
 蛇足になりますが、この「ハスの開花に伴なう音」は江戸時代の俳句にも出てきており、その時代から民間では「ハスは開くときに音がする」と信じられていたようです。

 ひとりきく時やハチスの開く音  大江丸(文化2年;1805年)
 法の庭音も開くや蓮の花     魚楽(宝暦6年;1756年)
 暁に音して匂ふハチスかな    潮十子(宝暦6年;1756年)
 管弦にて開くものかな蓮の花   河輩(宝暦6年;1756年)

 由来に関して、大賀一郎
 「昔ある寺の僧が、蓮池に魚の発する音を聞いて、蓮から発すると思い込み、善男善女にはこの音が聞こえると、極楽往生が出来るなどといい出し、ためにその寺へ行く人が多くなり、世間に蓮の開花に音があるといいならされたのだ」
という言い伝えがあると論文の中で挙げています。
 この大賀さんの論文を読むと開花の音が聞こえるハスとして見物料をとったりすることもあったようです(明治から大正時代)。

【参考文献】
 大賀一郎,1921.ハスの開花について.理科教育4:3-11.
 大賀一郎,1937.蓮の開花の観察と開花音の実験.理学界35:833-850.
 大賀一郎,1937.蓮の開花音論争と開花及所謂開花音の実験観察.樹海1:1-47.
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 引用終わり。