トキの放鳥に思う

 私は新潟県民で、小さいころからトキのことが授業で出てきました。ある意味、「トキサイコー」と刷り込まれてきました。今回、ついにトキ放鳥までこぎつけたわけですが、県民としては関係された方々の努力に頭が下がる一方、学芸員、研究者としては今回の「野生復帰」には疑問を持たざるをえません。というのも「外国に分布している同じ種類の日本の植物をまく」ことと何処が違うのか区別がつきません。例えば、オニバスアサザが日本から野生絶滅したとして、外国から持ってきても、意味があるのかわかりません。ただの外来種と同じです。意味がありません。トキが生き残っていた時代のような自然を取り戻すことは意義があると思います。が、野生復帰は自己満足にすぎないとしか思えないのです。もっと、野生絶滅させた事実を深く反省する必要があるはずです。野生復帰でチャラになったと勘違いしてはいけません。税金の使い道としても疑問です。もっと、今まさに絶滅に瀕している生物の保全・保護、そしてその研究のために費やしたほうが有意義だったのではないでしょうか。
 ・・・とは思っていても、喜んでいる親戚の前ではストレートに言えない自分がいるのでした。だって、新潟日報の夕刊の裏1枚がぶち抜きでトキの飛翔している写真でしたし。新潟県民としてはやっぱり悲願だったんですよねぇ。複雑な気持ちです。